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書評

したたかな生命

書籍名したたかな生命
著者北野 宏明、竹内 薫
出版社ダイヤモンド社
価格1,680円(税込)

数年前にニューヨークで大停電が起こりました。その際、ホテルは2種類に分かれたそうです。「停電の中でも快適に過ごせたホテル」、「停電すると何も身動きができなくなったホテル」。

古いシステムのホテルでは、窓も手動で簡単に開けることが可能でしたし、自家発電もありトイレもエレベーターも問題なく動きました。しかし逆に、最新鋭のコンピューターシステムを採用していた高級ホテルでは、空調設備もトイレの水も電気も全てコンピューター制御のため、一旦停電になってしまうと、全て止まってしまったというのです。

皆さんは「ロバストネス」という言葉をご存じでしょうか? 日本語に訳すと「頑健性」、つまり「大幅な擾乱に対して対応できる能力」のことをいいます。前述の高級ホテルでは、コンピューターを使っているため、大勢のお客様に対して要望に合った対応が可能です。その部分は「ロバストネス」になっていたといえます。しかし停電に対しては対応することはできなかったのです。

ある一部分を強くすること、つまり「ロバストネスを獲得すること」は、一方でどこかに弱い部分「脆弱性」が出てくることを意味します。

牛丼のチェーン店、吉野家が特定の仕入れルートを使い強い競争力を持っていた(ロバストネス)のに対し、BSE問題が起こり、その仕入れルートが無くなることで急激に経営難に陥ったのは「脆弱性」が表面化した例です。

このように「ロバストネス」と「脆弱性」は切り離せない関係にあります。かといって「脆弱性」の発生を恐れていても何も進みません。 大切なことは、1つの事に対し「ロバスト」を手に入れることは「必ず違う一面で脆弱性」があることを認識することです。これを知っているかどうかで、問題が発生した時の対応方法が全く変わってくるのです。ビジネスにおいても「選択と集中」しようとする企業も多くあります。その戦略は決して間違いではありません。しかし、一点に集中しようとすれば、「脆弱な部分」が出てくる可能性があるということを忘れてはならないのです。

この本のタイトルは『したたかな生命』とありますが、「ロバストネス」の考え方はビジネスにも通じるものです。ぜひ多くのビジネスマンに読んでいただきたい一冊です。

したたかな生命

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